鍬と柄の因果関係
お客さんから、『この鍬昔から使よーるけどみやすいんよ。(広島弁で使いやすいの意)』と言って見せてもらった鍬には必ずいい具合に仕上がった柄がついています。何年も何年も使って握りこんだ柄は絶妙な握り心地になっています。私は一度だけ見たことがあるのですが、そのお婆さんはいつも同じところを握っていたらしく、彫り込んだかのように柄に指の形がしっかり残っていました。そういった柄は新品の柄の何倍も価値があると私は思っています。
重たい鍬は鍬が重たい?
お客さんから『この鍬重いんよー』と言われて見せてもらいます。そして、持った瞬間ズッシリと重みを感じます。まあ、だいたいは昔ながらの丈夫な鍬か、贅肉(強度とは関係ない部分にある余分な重量)のたっぷりついた鍬なんですが、見た目普通なのになぜか重い・・・そんな時は柄に問題があります。
鍬に対して柄がしっかりし過ぎている!
言ってる本人もややこしいので図で説明します。
ここに2本の柄があります。見た目はほぼ一緒ですが握り心地が全然違います。
え、全然分からない?じゃあ、これで
やっぱりわかりづらい・・・(悲)
僅かですが左の柄のほうが少し太いです。実際計ってみると縦、横の直径が1ミリずつ大きいです。そして、楕円の形も若干右のほうが滑らかです。僅かな差ですが、同じ鍬に差してみると断然差がでます。左の柄は握りが太くしっかりしているので力がよく入りますが太い分重く感じます。右は楕円が細い分手軽に感じます。
特に女性の方は男性と比べて手が小さいのである程度の強度があれば細い方がいいかと思われます。この握りの太い細いの違いは、重い鍬を軽く感じさせるくらいの差があります。なので、長年使い続けて自然に細くなり手に馴染んだ柄というのは使いやすいのです。
ある常連のお婆さんは長年の使用でものすごく細くなって今にも折れそうな鍬の柄を、『これがみやすいんよ~』と言って大事に使われているのはそういう事だと思います。余談ですが、その鍬を修理するときは柄を抜いたり差したりしないといけないので、その度に折れないかと震え上がります(泣)
とはいえ、最近買ったばかりの鍬の柄が太くて重く感じるという方に
『10年ほど使えば軽くなりますよ!』
なんて言ったら鬼ですよね、ホント(笑)ご安心ください、柄を細くする手段は他にもあります。
私も何件か受けた仕事ですが鉋(カンナ)と木工ヤスリで削っていくというやり方です。万力か何かで柄を固定しておいてゴボウの皮をむくように鉋で削り、一皮むいてはヤスリで角を取って握りを確かめて、太ければまた一皮むいていくという繰り返しの作業になります。地味でしんどい作業ですが、慌てずゆっくりやってください。
削り過ぎた柄は元に戻りませんよ!
それではよき鍬ライフを~ !