モロ木(桧科ビャクシン属)
【ネズ】【ネズミサシ】【ムロ】とも呼ばれています。
水に強い木なので昔から農業用資材として、使われている木材です。
私の嫁様の実家は薪のお風呂なのですが、焚き付けにモロ木の葉を乾燥させたものを使っています。農家にとっては身近にある木のようです。
なので古い鍬には先人が作ったモロ木の柄が差してあったりします。現在でもモロ木で作ったんじゃないかと思われる鍬の柄が多数存在します。
モロ木の柄の良い点は水に強いので朽ちにくい、そして何より樫などに比べて圧倒的に軽いというところにあります。なので鍬にモロ木の柄を差すととても手軽な鍬になります。それにモロ木は柔らかいので削りやすく、いろいろ加工がしやすいという利点もあります。
これだけだと良いところばかりのようですが、実は鍛冶屋泣かせの木なのです。
鍬に柄を入れて固く留める為にクサビを打つのですが、モロ木の柄の場合、クサビをいくら打ってもあまり効かない、というかほとんど効かない、つまり固く留めることが難しい木なのです。ウチでは【豆腐の木】などと言ってます(笑
かといって、あまり固く留まっていない鍬をお客さんに渡すわけにはいかないので、なんとかしないといけません。
ここからはちょっと難しいかもしれませんが、一応の参考にしてみてください。
まず、普通の柄を固く留める手順どうりにヒツと柄の隙間を平クサビで埋めて真ん中にトンガリクサビをズドンと打ち込みます。ですが、手応えはあまりありません。
じゃあ、もう一本打ってみようか。。。と次々打ってみても穴だらけになるだけで固くなることはありません。じゃあ、どうしましょうか?はい、真ん中に打ったクサビを抜きます。
すると、こんな感じで大穴が出来ます。
ここにこの穴より少し太めの木の杭をうちこみます。
杭はもちろんモロ木を削って作ります。堅い木で杭を作って打ってしまうと最後にクサビを打ったときに杭ごと深く柄に入り込んでしまい、柄が割れてしまう事があるからです。
このように万力に固定して杭をしっかり打ち込みます。
そして、少しだけ残して切り落とします。その残った部分をさらに叩き込みます。
これで、密度が倍になったモロ木の完成です。その打ち込んだ杭の真ん中にさっき抜いたトンガリクサビを打ち込みます。すると、さっきよりは手応えがあるはずです。足りなければもう一本どうぞ。
それでもまだまだスカスカな手応えの場合はクサビを抜いて、またモロ木の杭を打ち込んでください。ここまでやればかなり固く留まるはずです。最後にクサビを打って出来上がり。これで当分心配なく鍬が使えるはずです!
それでは皆さんよき鍬ライフを~!