動物と触れ合う鍛冶屋

自然豊かな里山を営業で回っていると様々な生き物に出会う事があります。それはペットであったり、家畜であったり、野生であったり様々です。

山間の農村に流れる小川

草を食む者

ある農家のお宅に伺った時の事です。辺りに誰もいなかったので玄関のチャイムを押したのですが、中に人の気配はありません。ですが、家の周りで作業しているのかも知れないので「ごめんくださ~い」と叫んでみます。

すると、『うぇーい』と遠くから声がします。もう一度呼びかけると、また『うぇーい』と何やらパーリーピーポー的な返事が返ってきます。どうやら、近くの田んぼから聞こえてくるようで何か動いているのが見えます。近くに行ってみると、

『うぇ~~~~い』

金網越しに撮影した草を食べている1匹のかわいい羊

羊・・・ですね(苦笑)

どうやら羊が田んぼの畦の草を食べているようです。

しかも1匹ではなく4,5匹はいます。

金網越しに撮影した草を食べている2匹の羊

このように農村では山羊や羊などを放牧して草を食べさせているお宅を時々見かけますが、これだけの数を飼っている家は珍しいですね。かわいいのでしばらく見ていましたよ。でもね、毛を刈ってやらないといけないし、冬場は飼料を与えないといけないからお世話も大変らしいですよ。

鍛冶屋包囲網

takitetuさんは礼儀正しい営業を心がけます。きちんと挨拶、きちんとお礼を旨としておりますが、今回はちょっと様子が違いますね。お客さんの家の庭まで軽トラを乗り入れ、車から降りようとせずちょっとだけ窓を開けてそこからお客さんと仕事の話をしています。全く礼儀の出来ていない最低の営業マンですね、やさぐれてしまったのでしょうか?

「違うよ!放し飼いのドーベルマン4頭が車を囲んでるから出れないんだよ!」

説明しようドーベルマンとは<労働犬、警備犬として品種改良された非常に頭の良い犬、飼い主に対しては強い忠誠心を持つが他人に対しては警戒心が極めて強い!

『何にもせんから大丈夫よ~』と飼い主さんは言いますが、立ち上がったら人間より大きい犬がその気になれば、自分なんかあっという間にトンカツの横のキャベツのように刻まれてしまいます。「すいません、無理です!」そこは男らしく断ります。やれやれと飼い主さんが檻に入るように犬に促していき、檻の中にドーベルマンが全て収まるのを確認してやっと車から降りる事ができましたとさ。よかったね、takitetuさん!

鍛冶屋の鎮魂歌

配達する鍬を乗せた軽トラック

その日は子供を連れての営業でした。コンビニで買った食玩のオモチャで遊ばせながら農家のお宅を回っています。そんな中、立ち寄った農家の方と仕事の話を煮詰めているとなにやら頭上をうるさく飛んでいるのが見えました。それらは近くの納屋から出入りしているようでその行く先には天井からぶら下がった巨大な・・・ピーナッツの殻?・・・いや、どうやら蜂の巣のようですね、しかも家主は最凶のスズメバチ。まさに要塞の佇まい、頭の中でアナフィラキシーショックという言葉が踊っています。

すると何やら後頭部にもぞもぞと違和感が、とその刹那焼けるような激痛が後頭部に走りました。アイタタタタタ。。。 どうやら黒い帽子に反応して襲ってきたみたいで、慌てて帽子を投げ捨てるとそこには一仕事終えたスズメバチが張り付いているではありませんか(泣)

「鍛冶屋さん大丈夫?」そうお客さんに言われると『大丈夫です!』と笑顔で返してしまうのが自分の悲しい性分です。本当は泣きながら病院に駆け込みたかったのですが、車の中の子供も心配そうにしているので、それからも痛みに耐えながら配達を続けました。痛みが収まる気配はまるでありません。

そして、やっと最後のお宅に到着です。修理を終えた鍬を引き渡すとお客さんは財布を取りに家の中に入っていきました。

ふと見ると、そこには丸々と太った猫がいます。きっとこの家の猫なのでしょう。

自分の手をなめている黄色い首輪をした猫

この猫ではありません

疲れ切った自分を癒やしてくれるのかのように、ゆっくりと足下にすりよって来てくれました。優しく猫をなでながら遠い空をぼんやり眺めると今日の出来事が走馬燈のように流れていきます。早く我が家に帰ろう、郷愁に思いを寄せ、あともう少しだと自分に言い聞かせます。すると、それまで無抵抗だった猫が何がお気に召さなかったのか突然自分の手にガブリ!

アイタタタタタタ。。。(泣)

なんと猫が噛みついてきたのです。今まで営業中に犬に噛まれた事は3度ありました。なのでもはや、犬に手を出すことは絶対にしていません。そして、この日以降知らない猫に手を出す事も無くなりました(悲) 

慌てて振りほどいた腕にはしっかりと猫の歯型が残っていましたが、そこに何も知らないお客さんが戻ってきたので痛がるわけにもいかず、お代を頂いてそそくさとその場を去りました。だんだんボロボロになっていく父親に子供も困惑しています。もはや満身創痍、頭がいたい、手がいたい。。。フラフラになりながらやっとの思いで帰宅することができました。

嫁様に報告して手当してもらおう。。。と思った矢先に嫁様がやってきて

『子供に簡単にオモチャ買ってやったらいけんって言ったじゃない!』

どうやらコンビニで買ってやった食玩が彼女の育児ガイドラインに抵触したらしく、激しく叱責されています。そして、私は【フランダースの犬】最終回のネロのようにつぶやいたのでした。

『もう眠いよ。。。パトラッシュ』  (完)