草鎌を研ぐ前に
今回預かったのは切れなくなった草鎌3本です。鍛冶屋なのでもちろん刃物研ぎも出来ます。鎌にも用途やサイズによっていろいろな種類がありますが柔らかい草を刈る時に使うのがこの草鎌、又は薄鎌と呼ばれる鎌です。
文字道理り薄い鎌なので柔らかい草専用です。なのでちょっと無理をして丈夫な草などを刈ろうとすると曲がったり刃がこぼれたりする事があります。
見事に曲がっていますね。ご覧の通り薄く造ってあるので無理は禁物ですよ。
このままでは刃を研ぐ事ができないのでまず曲がりを直してやらないといけません。
草鎌の曲がりを直す
先に根元の曲がりから直します。万力に根元を挟んで少しずつ元に戻していくのですが、みなさんご存じでしょうか?草鎌には右利き用と左利き用が有ることを。右利きの場合は上の写真の曲がりを真っ直ぐにするのでは無く、少しだけ刃の傾きを残してやると地面に手があたりにくくなって草を根元から刈り取り易くなります。
そして次は刃の全体の曲がりを直していきます。
鎌の背中、刃先の反対の部分をハンマーで軽く叩いて曲がりやひずみを直していきます。この時注意しなくてはいけないのが、刃先を絶対に叩いてはいけません。鎌には焼き入れ(ハガネを高温で加熱し冷却することによって切れや強度を得る事)がしてあるので、刃先を叩くと刃にヒビが入ったり、欠けたりしてしまいます。なので背中の部分をコツコツ叩いて曲がりを直してください。
じゃあ、なぜ背中は叩いていいのか?(基本的にやってはいけないのですが・・・)簡単に説明しますね。刃物を造る場合はだいたい、ハガネを柔らかい鉄でサンドイッチのように挟んで造る場合とハガネと柔らかい鉄を一枚ずつ合わせて造る場合がありますが、どちらにしても背中の部分は鉄、もしくは鉄で保護されているので叩くならここしかありません。
ですが、衝撃が刃先に響いて刃が飛んでしまう事もよくあるのでご注意下さい。なので上の画像のように木の台を使うなどすると良いでしょう。それでも叩くときは台の端で叩くようにして刃先が台に当たらないように気を付けてください。万力で挟むときも刃先まで万力に噛ませないようにしてください。
曲がりはほぼ直りましたね。これでやっと刃を研ぐ事ができます。
はい、出来上がりです。指を当てると吸い込むように切れます。これでしばらくは良く切れるでしょう。今度は無理をしないでくださいね。