鎌の柄の交換

柄の折れた鎌

鍛冶屋ですので刃物研ぎも致します。包丁から押し切りまで、出来ない物以外は何でも承ります。今回の依頼は山鎌ですが柄に大きな亀裂が入っているので柄の交換もしなくてはいけません。

大きな亀裂の入った柄の付いた錆びた鎌

鎌の柄に入った大きな亀裂

折れた柄から鎌を外す

さて、柄を抜くのも結構大変な作業です。なにせ抜けないように差してあるんですから(笑)まず、2本入っている釘を抜かないといけません。

だいたい釘は貫通させて曲げるか、かしめて(ハンマーで叩いて潰して抜けないようにする事)あるのでハンドグラインダーである程度擦り落としてしまいます。そこをポンチ(先端が丸く尖った道具)のような物をあてがってハンマーで叩いてやると、少し釘の頭が飛び出るのでそこをバールで抜いてやります。

ちなみに瀧川鉄工所では要らないドライバーを丸く削ってポンチとして使っています。

かしめた釘を擦り落とした鎌の柄

鎌の柄に入っている少しだけ浮いた釘の頭

鎌の柄を入れる前に

台の上に置かれた柄の付いていない錆びた鎌

やっと柄が外れましたね、では柄を入れましょうか!と行きたいところですが慌ててはいけません。まず、水を入れたバケツを準備してください。

地面に置かれた水の入ったバケツ

そして、釘の穴を溶接で潰してしまいましょう。溶接の熱で刃の焼き入れ(高温で熱した鋼を急冷することによって硬度や耐久性を持たせる事)が戻らないように迅速に穴を潰しすぐにバケツの水に鎌の刃の部分を浸けてやります。この作業はスピードが命です。

根元付近の刃についた水分が熱で蒸発していくのでまた刃の部分を水に浸けます。刃先についた水分が蒸発しなくなるまでこれを続けてください。そして、溶接部分をハンドグラインダーできれいに擦っておきます。

新しい鎌の柄と穴を潰した錆びた鎌

これで準備完了!?いやいや、これからが一番肝心な所です。新しい柄に付属しているリングを取って鎌に入れてみてください。

錆びた鎌に中途半端に入ったリング

ここでストップしてしまいました。ということは柄がここまでしか入らないということです。リングがしっかり根元まで入らないと鎌が曲がったり柄が折れたりする原因になってしまうので鎌の柄差し部分をグラインダーで少し削ってやります。

錆びた鎌に深く入ったリング

これくらいまで入れば大丈夫でしょう。最後はハンマーで叩き込むのでもう少し入る予定です。リングはまた柄の先端に入れておいてください。

逆に根元まで入ったとしてもリングと鎌の柄差し部分に隙間がある場合は、柄が緩む大きな原因になるので鎌の根元の一番厚みが有る部分で止まるように調整してやらないといけません。まあ、調整といってもハンマーで叩いて少し楕円にしてひっかかるようにしてやればよいのです。

これでとうとう柄を入れる事ができます!ですが、その前に刃を研いでおきましょう。新しい柄をつけて刃を研ぐと乾いても消えない汚い染みが残ってしまうので研いだ後に柄を差した方が綺麗な仕上がりになります。

 

鎌に柄を入れる

そして、研いだ鎌を万力に噛ませて柄を叩き込んでやりましょう。私は神経質なので万力にウエス(布)を噛ませて鎌を傷めないようにしています。くれぐれも刃先を直接挟んで刃を折らないように!

万力に挟んだ鎌にしっかりと叩き込まれた鎌の柄

柄の尻をハンマーで叩いてしっかり差し込んでください。

ハンマーで叩かれている万力に挟まれた鎌の柄の先端

万力が無い場合は、軽く鎌を差し込んで柄を持ってたまま柄の尻を叩いてやると、鎌の方から柄に入って行きます。

根元までしっかり入ったらドリルで穴を空けて釘を入れます。釘を貫通させて少し残して切り落とし、残った部分を曲げて完成です。釘は1本だと緩みやすいので2本入れる事をオススメします。

新しい鎌の柄には貫通しない程度の短い釘が2本付属しているのですが、私は使いません。貫通させない方が見栄えはいいのですが、経験上やはり緩みやすいと自分は思っています。なので丸棒釘N75を3.4mmのドリルで空けた穴に若干叩き込むような感じで入れています。結構太い釘なので2本も入れれば安心の強度ですが、その分曲げにくいのでカットする前に軽く曲げてから切るのがコツです。

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鎌の柄に打たれた二本の釘

いろいろと道具が必要になりますが、一応の参考にしてみてくださいね。

そして、刃物の取り扱いは危険ですのでくれぐれもご注意ください。

千吉 薄鎌の柄 No.13

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千吉 厚鎌 替柄 口金&釘付 360mm No.15

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