『こまざらい』をご存じですか?

鍛冶屋ネットに頼る

いや、ちょっとしたことがきっかけなんですがね。ブログの記事を練っている時にある鍬の画像が必要になってしまったんですが、どうにも現物が手元にないので渋々ネットで検索して引っ張ってこようかと思ったんです。

ところがね、ないんですよ。いろいろ検索しても出てこない、もうびっくり。ネットは無限だ!と、どこぞのアニメでも言ってたのですがどうやらそうでもなかったみたいです。

鍛冶屋のローラー作戦

うちの鍛冶屋でも年に一丁修理の依頼があるかどうかという鍬なのでもう来なかったらどうしよう。急に不安になってきました。普段よく農家の納屋で見かける鍬もいざ必要になるとまるで見かけません。

物欲センサーってやつですね。なのでわざわざ以前修理したお宅や営業回りの最中にちょっとお尋ねしたりと。

そうやってお客さんに迷惑をかけながら集めてきましたよ!

これが『こまざらい』又は『こまざらえ』と呼ばれる鍬です。

修理されてきれいになり柄も新しくなったこまざらい

修理されてきれいになり柄も新しくなったこまざらい

修理されてきれいになり柄も新しくなったこまざらい

使い古されたこまざらい

使い古されて朽ちかけたこまざらい

何?ただの古い三つ鍬じゃないかだって?

とんでもない!こまざらい(こまざらえ)堆肥を掻いたり引き寄せたりする為に特化された鍬なのです。堆肥に突き立てる為だけに作られているので最初から先端を細く尖らせてあり、3本の爪の角も切れないように丸く潰してあります。重たい堆肥に使うので曲がらないように普通の鍬より爪が短く作られており角度ものさからずかぎからずといったところです。

このこまざらいの特徴として面白いのが、普通の鍬が爪の先から摩耗していくのですがこまざらいは根元から腐っていく、そうです、摩耗していくのではなくこびりついた堆肥によって腐ってしまうのです。なので修理で預かる時には根元の部分だけえぐれたようになっている場合が多いですね。恐るべし微生物!

このように特化された鍬は他にもあります。

雁爪(がんづめ)

これは雁爪と言ってバラス(砂利)を掻いたり引き寄せたりする鍬です。固い砂利の中に突っ込むので鍬先は尖っているように見えますがかなり厚みを持たせてあります。

地面に置かれた雁爪

地面に置かれた短い柄のついた雁爪

爪の厚みを見るために横から見た雁爪

なので普通の鍬のように畑で使うと立たないわ切れないわで難しくってしょうがありません。以前お客さんが『この鍬がすごい難しいんよ』と言って雁爪を出してこられた事がありましたが、さもありなん。「それ、バラス用の鍬だから立たないですよ」と説明したことがありました。

その代わりバラスの中で使うと非常に楽に砂利をかき寄せる事ができます。なので主に土木作業に使われています。自分も使っていますが本当に楽ですよ。

このように機能を限定することによって特定の作業において抜群の性能を発揮する鍬もあるのです。くれぐれも用法をお間違えのないように。