うちのお店は日曜日と盆と正月が休みですが数年に一度平日に仕事をしない日があります。
そして、その日がやってきました。
火床(ほど)を造り直す
鍛冶屋の仕事は火造り鍛造、毎日鉄を融点近くまで焼いてハンマーで叩いています。この火を燃やして風を送り火力を調整する設備を火床(ほど)と呼んでいます。
こうして毎日火を燃やしていると少しづつ火床も荒れてきます。
風の出口である火口(ひぐち)はどんどん溶けていき、カバーも薄くなっていきます。
ほら、火口を保護するために固めてある土にも大きな亀裂が入っていますし、火口も短くなって荒れています。これでは火力はでません。
こうなってしまっては燃焼効率が悪いのでとうとう火床を造り直す時がやってきました。
さてさて、まずは分解しましょう。火口と送風機をつなぐパイプを保護している土を解体します。土とはいえカチカチになっているので、結構重労働です。
はい、きれいさっぱり取り除きました。
火口がかなり小さくなってますね、穴の出口が荒れているので風が広がってしまい火の温度が上がりにくくなっています。
道理で最近火造りが難しくなってきたなと思ってたんですよ。新品と比べて見ると一目瞭然。
ほらね。
壊したら今度は造らないといけません。これはこの日の為に取っておいた土です。真砂土と赤土、そして魔法の粉をいい感じに混ぜた土です。これに水をいれて呪文を唱えます。
『ナーイス!ファンタジー♫』
と広島ローカル芸人の物まねをしてもどうしようもないので、ええ、長靴を履いてこの中を1時間以上練り歩きます。
すると、耐熱性と粘りのある土の出来上がり。この日だけはミキサー車が欲しくなるんですよね。
そして、火口の周りに塗っていきますよ。
そして、乾燥すれば出来上がり。しかし自然乾燥だと半年くらいかかるので、木を燃やしてちょっとお急ぎ便でいきます。
これで概ね出来上がり。完全に乾燥するまではもうしばらくかかりますが、仕事しながら仕上げていきます。
もう一つの鍛冶屋の静止する日
せっかくなので薄くなったカバーの修理もしておきましょう。
火床のカバーに大穴があいてしまったので新しく作ることにしました。
まあ、これも数年に一回の行事みたいなものです。
え?火床のカバーって何か?ですって?
これです!どーん!
毎日火にさらされてるので最後は紙みたいに薄くなり、
バラバラになるのも時間の問題なので新しく造りますよ。
さて、材料はなんだろう?
鉄板です・・・まあね。
これに図面引いて切断して折ったり、曲げたり、大人の工作の時間。
天井部分が出来たら、側面に各部品を溶接していきます。
♪でっきる~かな、でっきる~かな、さてさてホホー♪
きっとノッポさんよりは親父のほうがガス溶接は上手いはず。
はい、出来上がり。
これで数年大丈夫!
これでまた明日から通常営業です(完)