読者からのお手紙
鎌の柄の長さは決まっているのですか?
1尺2寸とか3寸とか聞いたことがあるのですが・・・
このブログを書き始めてそろそろ2年、読者登録は全宇宙に8人・・・。
細々とやってまいりましたが、初めて質問が届きました(泣)。
いい質問ですね、確かに今まで何も考えずに鎌の柄を注文していました。
鍬(くわ)の柄の場合
鍬(くわ)の柄だとこの辺りは4.5尺、1350mmが標準です。
ですが、地域によってはもっと短い所もあります。
実際、ネットで鍬の柄を買おうとすると1200mm、1000mmの鍬の柄をよく見かけます。むしろ1350mmの柄の方が見つかりにくいですね。
これは業者が適当に決めている訳ではなくてその土地土地での伝統的な長さがあるのですが、鎌の柄はどうなのでしょうか?
鎌〈かま)の柄の場合
とりあえずウチにある鎌(かま)の柄の長さを測ってみると1尺2寸でした。
やはり決まった寸法があるのか?
我が家でも昔から片手用の道具の柄は1尺2~3寸ぐらいの長さにしています。
とりあえずいつも柄を仕入れている問屋さんに聞いてみることにしました。
『鎌の柄の寸法に基準はあるのかって?
そんなものはないですよ。
業者各々好きに造ってますよ。』
なんだって!まあ、薄々そうじゃないかなとは思ってましたが・・・。
とはいえ、伝統的な寸法はあるはず。
ここで終わってしまっては中身ぺらぺらな記事になってしまうので、
もうひと踏ん張りすることに。
そして、ついにあの男に会いに行くことにしました・・・
そうです、伝統的農業をこよなく愛すO氏の元へ向かいました。
以前農業に関する資料のような本を見せてもらった事を思い出したからです。
そして、彼に事情を説明すると快く資料を貸与してくれました。
どーーーーん!
しかし、分厚い。。。本を開く勇気が出るまで数日かかったのは内緒。
広島県史 民俗編 編集発行 広島県 昭和53年1月31日発行
三原市史 第七巻 民俗編 編集発行 三原市役所 昭和54年9月30日発行
どういう本かというと、
広島県域に伝わる民間伝承の由来を明らかにすることによって、現在の生活との結びつきを究明したもの (広島県史)
という説明がなされており、どの本も昔の人々の生活が詳細に記されています。
この本ならば鎌(かま)の柄の寸法について何か手がかりがあるはず。
読み進めるにつれ
なになに・・・
ふむふむ・・・
これはすごい!
当時の農具の詳細な資料が事細かに記載されています。
鍬(くわ)についても私の知らない名前の鍬が沢山あって驚かされます。
お、鎌(かま)の記載がありますね。
読んでいると面白い事が書いてありました。
神石郡豊松では買いたての鎌は使わず、翌年に使う。新しい鎌はまず熟練者が使い慣らし、若い者の使わせる。
ちょっと笑ってしまいました。訳してみるとこうなります。
『若者は無茶してすぐ鎌の刃を欠けさせるのでもったいないから新しい鎌は使わせない』
著者の生真面目な聞き取り調査の具合がよく解りますね。
刃については寸法、角度など詳細に書かれていますが、
柄について触れた記載は見当たらないですね。
ですが、さらに読み進めていくと興味深い文章を見つけました。
鎌(かま)の柄は、草刈り鎌には松の木がよく、木鎌にはヒムロの木などのように柔らかい木の方が切れ味がよかった。
鎌の柄は、鎌首を握ってひじまでの長さがよい。
こっ、これは!!
人によって違いはありますが、私の場合だと35~36㎝つまり1尺2寸くらいです。
古代エジプトでは伸ばした指先から肘までの長さを【1キューピット】という単位で使っていましたが、これはそれに類似していますね。
回答編
きっと鎌が生まれた時から試行錯誤を繰り返して1尺2寸という今の寸法に落ち着いたのではないでしょうか。
質問に答えるとするならば、こうでないといけないという基準はないですが、
職人さんの心の拠り所になるような伝統的な概念はあるようです。
今回はこれで私なりの回答とさせていただきます。
また、面白い質問があれば記事にしていきたいと思います。
それでは、また!