韓国製押し切り!?
先日預かったこの道具で我々は頭を悩ませております。
依頼主が韓国旅行で現地の鍛冶屋で購入したものです。どうにもキムチを切る?道具らしく、なんと千円とか二千円くらいだったそうです。
刃渡り17㎝ほどの包丁のような刃をL字型の金具にボルトで固定して上下に可動するようになっている簡素な造りです。依頼主がこの金属部分だけを購入して柄や台になる木は自分で取り付けたそうです。
このように刃と台の金具の間に切りたい物を挟んで切るという実にシンプルな造りになっています。日本でいうところの押し切りにあたる道具ではないでしょうか。
今回の依頼はこれと同じものを造って欲しいという事なのですが、
同じものと言われても材料は何なのか?
どうやって造ったのか?
日本製ならばなんとなく予想もつくのですが、造ったのは大陸の鍛冶屋さん。
まずは相手を知ることから始めないといけません。
よくよく見れば、なかなかの手練れの仕事です。刃を降ろす時に下のの金具と密着するように交差するのでちゃんと押し切りとして機能しています。
実際野菜を切って見ると使い込んであるせいか若干ジャリジャリという感じで切れますが、まあまあ切れる・・・というところですね。
大体の和包丁ならば鋼と鉄を沸かし付けて切れ味と強度を出します。
簡単に言うとホットドッグですかね。
パンが鉄、ソーセージが鋼、
固くてよく切れるが脆い鋼を柔らかい鉄で挟んで守るようにして和包丁は造られています。
ですが、この韓国製押し切りは物価が違うとはいえ、かなりの安価。
そして、そもそもそういう製法すらあるのか歴史的にも疑問です。
これは調べてみないといけませんね。
ですがあまり韓国の鍛冶に関する記事は少なく鍛冶技術などについての情報はなかなか得ることが出来ませんでしたが、ちょっと面白い記事を見つけました。
ふむふむ・・・
なるほど、なんとなく状況は理解しました。
これで、素材や製法のイメージは固まりました。さっそく造りたいと思います。
親父も初めての物を造るのにあたってちょっと楽しそうですね。
トンテンカン♪
トンテンカン♫
トンテンカン♪
それっ!出来上がり!
刃と台座は離れず食い込まず、擦り合うように密着しています。これが押し切りの一番大事な所です。
そして、新型は台の木に当たらないように端に固定しています。そうすることによって刃を傷める事がありません。
そして、行き過ぎないようにストッパー付き。
もちろん切れ味はオリジナルを凌ぎます。
試し切りの結果も上々でした。細かい事は内緒ですが、親父と相談していろいろと工夫してあります。
いやはや、依頼を受けた時は未知の事が多かったので若干不安もありましたが、想像通りに出来たのでよかったです。【完】