鍛冶屋とサミット

フライトロードにて

広島空港から世羅まで約30㎞を

ほぼノンストップで走れるこの自動車道路は

フライトロードと呼ばれています。

地道と比べるとかなり時間短縮できるため、

北部に営業に行く場合はよくこの道を通っています。

多いときは週に2~3回通ることもあり、

すっかり見飽きた風景になってしまいました。

ですが、最近なにやら様子がおかしいのです・・・。

数日前から、

空港付近の道路に一定間隔で警察官が配備されています。

なにかあるのかな?

折しも時は2023年5月・・・

そうです、G7広島サミットの開催が近づいてきたのです。

ニュースなどで交通規制などの情報はぼんやりと見ていましたが、

どこか他人事と決め込んでほとんど忘れていました。

配備された警察官はさすがにまだ手持ち無沙汰そうで、

自分の持ち場でただ時間の過ぎるのを待っているかのようでした。

5月18日の悲劇

北部へ配達の日ですが、

今日はフライトロードを使わず移動。

正直、サミット開催前日の

ナーバスになった警官達のいる空港には

近寄りたくないというのが心情です。

ひとしきり仕事も終わり、

お日様も山の稜線に消えようとする頃、

やっと帰路につきました。

疲労感の中、

もういつものようにいつもの道を・・・

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通ってはいけないっ!

と気が付いた時にはもう、

フライトロードの上を走っていたのでした。

まあ、しょうがないか・・・。

検問でもあったら面倒くさいな・・・。

悪いことしたわけでもないし、

堂々としてればいいか・・・。

そう思いながら、車内をちらりと見まわします。

お客さんにもらった新鮮な野菜です。

美味しそう。

道中の無人市で買った漬物。

晩ご飯が楽しみです。

ナイフと包丁、たくさん

ナイフだとっ!

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非常によくないですね。

もし見つかれば間違いなく突っ込まれます。

これまで遠くの出来事だった事が一気に現実味を帯びてきました。

今日は明らかに配備されている警察官の数も多く、緊張感も段違いです。

通り過ぎるたびにこちらを見ながら、

どこかに報告しています。

よりによってなんでこんな時に狩猟用の血生臭いナイフを大量に預かるのか・・・。

鍛冶屋という身分を理解してもらうためには結構時間がかかりそうです。

検問ありませんように!

祈りながら軽トラを制限速度内で爆走させます。

尋常じゃない数の警官とすれ違いながら、

やっとフライトロードの終点にたどり着きました。

しかし、国道と合流する交差点に差し掛かった時、恐ろしい光景が・・・。

交差点のあちこちにパトカーや白バイが配置され、配備された警察官は数十人。

その数の多さで若干渋滞が起きるくらいの密度になっています。

フライトロードと高速道路、

そして国道が交差する交通の要所。

なのでここが最後のポイントのはずです。

ここさえ抜ければもう安全!

もはや思考が逃亡犯。

信号待ちでなかなか抜けられないのがもどかしい!

検問はないようですが、

運転手と話している警官もいるため気は抜けない!

その背中には長野県警の文字が見えます。

全国から招集された精鋭達・・・。

ああ、余計冗談が通じなさそう。

信号が青になり濃縮された交差点をやっと抜けることができました。

バックミラーに見えるパトランプの点滅がだんだんと小さくなっていき、

それが見えなくなった時、

鍛冶屋はほっと息をつくのでした。

新しいミッション

そして5月20日

サミット真っ只中ですが、今度はこれを配達しないといけません。

鍛冶屋のピンチはまだ終わらない! 

to be continued!