がんぎを切る

がんぎを切る鍬

この鍬はがんぎ鍬と呼ばれています。

その特徴は、とにかく爪一本一本の幅が広く、

爪と爪の間隔が狭くなっています。

通常の三つ鍬と並べてみるとその特徴ははっきりと判ります。

これは広島県世羅郡に多く見られる・・・

いえ、多く見られた鍬です。

私も預かるまで忘れていたくらいでした。

がんぎとはなんぞや

世羅には昔から爪の幅の広い鍬が多いですが,

別称を与えられる程にがんぎ鍬は広い爪を持っています。

数十年の使用で摩耗してこの広さ、

修理して元の形を再現してやると、こんなことになります。

その用途は名前のとおりがんぎを切る鍬です。

そう、がんぎとは、

 

・・・・・・・ん?あれ?

 

なんでしたっけ?

私もぼんやりとしたイメージしかなく、

言語化して説明するだけの知識はありません。

これではいけないとネット検索しても、

がん‐ぎ【×雁木】
 空を飛ぶがんの列のようなぎざぎざの形や模様
 雪の多い地方で、雪よけのために家々の軒からひさしを長く差し出して造り、下を通路とするもの。 冬》「来る人に灯影ふとある―かな/素十
 桟橋に続く木の階段
 「雁歯がんし」に同じ。
 木材を切るための大きくて歯の粗いのこぎり。
 「雁木鑢がんぎやすり」の略。
出典 小学館デジタル大辞泉について  

 などおおよそ農業とは関係ないものばかり出てきます。

いろいろ調べてみましたが、ガンギマリが出てきても、

農業に関係する【がんぎ】は出てきませんでした。

失われつつある鍬と言葉。

己の不明を恥じるばかり・・・

これはなんとかしないといけませんね。

困った時には・・・

そうだあの人に聞いてみよう。

当ブログでも準レギュラーの岡田氏に聞いてみることにしました。

www.takitetu.com

すると、彼もその聞きなれない言葉にとまどったらしく、

古い文献を調べてくれるという事になりました。ありがたや。

そして、しばらく待っていると興味深い資料が届きました。

この資料では、

がんぎ(種を撒く溝)

と記されています。

え?解決しちゃったかも!

解決したものの・・・

そうか、溝だったのか・・・。

一応納得はしてみるものの、

文字だけで知り得た情報なのでちゃんとしたイメージが湧きません。

これはもう辛抱たまらんので、

世羅への配達ついでに仲のいいおばあさんに聞いてみる事にしました。

『【がんぎ】ってなんですか?』

すると、彼女は自分の三つ鍬を持ってきて畑で実演してくれました。

畑の先端からバックするようにリズムよく鍬を入れていきます。

すると、きれいな一本の溝ができあがりました。

なるほど、百聞は一見に如かず。

鍬の幅分の線を引くように軽く浅く鍬を打ち込む。

いや、薄く切るように溝を作っていきます。

なるほど、故にがんぎを切る!

そういう事なのですね。

がんぎとは畑に種を撒くための溝

これでちゃんと説明できるようになりました。

後日談

写真を撮ってないことを岡田氏に怒られたので、

自宅の草だらけの畑でがんぎを切ってみました。

ちゃんと草取ってないからキレイな線にはなりませんね。

いやはや申し訳ない(完)