鍛冶屋紹介

野鍛冶 瀧川鉄工所

広島県竹原市で瀧川鉄工所という農具の鍛冶屋を三代に渡り営んでいます。一口に鍛冶屋と言ってもいろいろあり、大工道具、鋏、包丁、刀などそれぞれに専門の鍛冶屋がいます。瀧川鉄工所は『野鍛冶』と呼ばれる鍬などの農具を専門とする鍛冶屋です。

朝日を浴びるベルトハンマー

看板の無い鍛冶屋

瀧川鉄工所には看板らしきものがありません。昔親父が『看板なんかなくても客が来るようでないといかん!』と豪語していたのをうっすら覚えていますが、ただ看板を付けるのが面倒なだけだったのではないかと今でも思っています。 
なので近所でもウチが鍛冶屋だという事を知らない方は多いですね。人伝えにやって来たお客さんも必ず一度は通り過ぎてしまうという、そんな鍛冶屋です。

そして、鍛冶屋も営業回りをしています。現在、広島県の約3分の1くらいの範囲を1年程かけて回っており、農家を巡りながら鍬の修理などの仕事を頂き、それをこなしては配達するという日々です。

こういう生活なので農家の方と触れ合う機会が多く、現場の声を直接聞くことが出来るので仕事の上ですごく参考になることがあります。時には同じ話で1時間くらい堂々巡りしたり、何故か説教されたりしますが、みな暖かい方ばかりなのでいつも楽しく営業回りをさせてもらっています。

鍛冶屋の仕事

農具などの製造、修理が主な仕事です。請け負った依頼に応じていろいろな作業工程がありますが、良い仕事をする上で欠かせないのが鍛造焼き入れという作業になります。

火造り鍛造

コークスを燃焼させ高温になった火床(ほど)に鍬を入れて熱していきます。

コークスの炎で板鍬を加熱する鍛冶職人

赤くなるまで熱を加えて、ハンマーで叩いて形を整えていきます。ハンマーで叩く事により金属が高密度になり丈夫で長持ちする鍬になっていきます。

加熱した四つ鍬をハンマーで叩く鍛冶職人

焼き入れ

真っ赤になるまで加熱した鍬を水に浸けて冷却します。

焼き入れすることによって初めて鍬は切れ味を得る事が出来るのです。

加熱した三つ鍬に焼き入れする鍛冶職人

長い年月を掛けて習得することの出来るこの鍛造と焼き入れの技術こそが鍛冶屋として一番大事な部分だと思っております。

修理の終わった四つ鍬と三つ鍬と板鍬

そうして出来上がった鍬をお客さんの元に届けにいき、

喜んでいる農家の方を見るのは鍛冶屋冥利に尽きるというものですね。