環と鉤

鍛冶屋覚え書き

我々は基本的に記憶と経験で仕事をする生き物なので見本みたいな物はほとんどありません。変わった仕事を受ける度に過去の記憶を呼び起こして作業しています。なので久しぶりな仕事は勘が戻るまでちょっと時間がかかったりすることもしばしば。

ですが最近、このブログをメモ代わりに使う事を覚えてしまったのでちょっと画像なり残しておこうかなという、今回はそういう案件です。

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これは瀧川鉄工所製の(カギ)です。決してフック船長の手ではありません。

これを鉄の鎖に取り付けます。

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そして、チェーンの反対側には(カン)をつけます。画像の環の円周の長さはだいたい20㎝といったところ。

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そもそもこれで何をするのかというと、大きな石などを吊り上げる時に使う道具です。

さすがに吊ったことがないので画像をネットからお借りして来ました、ご苦労様です。

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昔の農家の多くは自分で家の石垣を積んでいました。なのでお客さんの納屋でチェーンをよく見かけますし、今でも自分で石垣を積まれる方が居られます。

そして、長年の使用で壊れてしまった環や鉤を造るのが今回の依頼です。

たかがチェーンの鉤、されどチェーンの鉤!ただ適当にはてなマークを造っている訳ではありません。重心が傾かないようにしたり、引っ掛ける時に色々な掛け方が出来るようにとちょっとしたコツもあります。

掛け方あれこれ

石にチェーンを巻いて環に鉤を通し、

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これは普通な掛け方。

チェーンの楕円の曲がりに掛けるだけでも止まるように。

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こんな感じで。

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鎖の隙間を通して掛ける。細くし過ぎると強度が落ちるのでギリギリ通るように造る。

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とまあ、使用者によってどんな使い方をされるのか分からないので色々な掛け方を想定して造らないといけません。ウチの親父曰く、上手な人ほど鉤に負荷をかけないそうです。

いい加減な仕事をすれば大怪我にも繋がりかねない道具なので割と気を遣います。

覚え書きと言うには説明が過ぎたかもしれませんね、では今回はこの辺で。(終)