ツルハシは実は尖っていなかった説

ツルハシ(鶴嘴)

主に土木作業用に使われており、固い所を崩したりするのに使われています。

とネットでは大体こんな風に説明されている道具です。

みなさんがよく見かけるツルハシはこんな感じではないでしょうか?

これを瀧川鉄工所では片ツルと呼んでいます。

地面に置かれた柄の付いていない片ツル

そして、このように両方にツルが付いているのを両ツルと呼んでいます。

両ツルは最近ではほとんど見かけなくなりましたね。なにせ重いんですよ、これは。

地面に置かれた柄の付いていない両ツル

そして、最近多いのがバチツルです。ホームセンターでもツルハシと言えばバチツルしか見ないような気がします。それも扱いやすいくらいの適当な重さの物が多いですね。

片方がバチ鍬になっているので色々と使い勝手が良いようです。これでタケノコを掘っている方も多いですね。

金床の上に置かれた柄の付いていないバチツル

戦後のお話

ショベルカーのような重機がなかった時代はこのツルハシだけで土木作業をしていたそうです。親父の話によればまだ少年時代、祖父の手伝いをしていた頃なので50年以上前の話になります。道路を作るために何十人もの作業員がツルハシを持って山を削る作業をしていたそうです。

なので作業の終わった夕方には作業長が摩耗して丸くなった大量のツルハシをウチに持って来て、それを祖父と親父が次の日の朝までに修理して引き渡していました。

真っ赤に焼けたツルハシをハンマーで叩いている鍛冶職人

それから半世紀以上経った今でも瀧川鉄工所ではその形を守ってツルハシの修理をしています。

修理が完了してきれいに磨かれた柄のついていないツルハシ

不思議に見えるかも知れませんが、ツルハシは最初は尖っていません。しっかりと四ッ角を立て先端は面にしてあります。それはツルハシは固い所を崩すだけではなく、地面を削る道具でもあるからです。ツルハシが重機の代わりだった時代、これ一本で色んな仕事が出来ないといけません。四つ角をしっかり立ててあるので立ち込みも良好です。

ちなみに先端から五寸ほどでちょっと曲げてあるのはまさおこしと言って固い所を打った時に手に響かないようにするためにするためです。

横から見た柄が差してあるまさおこしの付いたツルハシ

現在市販されているツルハシと呼ばれる道具のほとんどは最初から先が尖らせてあります。もうツルハシで【削る】という作業はしないという前提で造られているかのようです。

今は個人の農家の方でさえ重機を所有している時代、ツルハシの役目と言えばちょっと固いところを崩したり、石を動かすテコにしたりするくらいではないでしょうか。

時代が変わっていく中で農業の形も変わってくるのは仕方のないことです。自分も時代の変化に合わせてお客さんの好みに合うように仕事を変えていかないといけないと思っていますが、このツルハシの仕様は守っていきたいと思っています。